[文化][本]バナナの皮はなぜすべるのか?
バナナが好きだ。
ミネラルだけでなく食物繊維も豊富なバナナが好きだ。
味だけでなくお腹も満足できるそんなバナナが大好きだ。
「バナナの皮はなぜすべるのか?」という本を読んだ。
これがとても興味深かく、バナナの歴史まで調べたので、それらをまとめて書こうと思う。
断っておくが、
これは決して”バナナの皮の滑りやすさ”について証明するようなものではなく、
”バナナの皮で滑る"という、ステレオタイプと化してしまった現象をざっとまとめるものである。
バナナの始まり
バナナが書物で初めて登場したのは、
1741年 植物学者 ゲオルグ Georg Eberhard Rumphiusの「アンボイナ植物誌 Herbarium amboinense」であるが、
紀元前8000〜5000年には既に世界最古の農業遺跡であるクック湿地帯で栽培されていたようである。
ヒエログリフにも食用としてのみならず、治療に利用されていた様子が残っているらしい。
欧米に持ち込まれたのは、もっとずっと後になる。
その後、イギリス入植者がアメリカでの栽培を試みるが失敗するが、16世紀には(おそらく南米で)広まったらしい。
ちなみに、1799年にはキャプテン・クックがハワイでバナナ栽培を見つけている。
ちなみに日本には、明治維新後から輸入/移入され始めたが、明治以前にも一部の島々では栽培していたようである。
滑った人がいたのか?
では、バナナが見つかってから人々が滑るまでに何があったのか。
アメリカがバナナを大量に輸入し始めたのは、1866年。今はもう見ぬグロスミッチェル種だった。
しかしながら、1879年、当時全国的に売れていたアメリカの雑誌Harper’s Weeklyで、その皮のポイ捨てが紹介され、
1909年には、セントルイスでバナナの皮を公道に投げ捨てることが法律で禁止された。
日本でも、バナナが庶民の食べ物になったころは皮が落ちていたことがあったらしいが、なぜバナナの皮は落ちていてみかんの皮は落ちていないのか、不思議に思う。(話題性かしら?それとも滑るから?)
何はともあれ、
バナナは有名になり、その皮がポイ捨てされ、実際に滑る人がいたことは間違いない。
それを見て閃いたのが、アメリカの芸人なのである。
初めて滑った人
これはアメリカの芸人 ビリー・ワトソンが自称しているようで、1900年ごろのことである。
日本人だと、チャップリンが元祖ではないかと思っている人もいるようだが、彼が初めてバナナで滑ったのは、1915年「アルコール先生海水浴の巻」の時であり、少なくとも彼よりはビリーの方が先だ。
(ただ、映画として”バナナの皮で滑る”パフォーマンスを初めて取り入れたのはチャップリンだと言える。)
その後もバナナにまつわるお笑いやエンターテイメントはたくさんあるが、それは本を読んだり調べたりしてほしい。
こうして、”バナナの皮が滑る”パフォーマンスが誕生したのである。
日本の文化では
1899年に、正岡子規がバナナを詠んでいるが、それは冬の季語とともに使われており、1902年の句ではバナナを夏の季語として使用している。
さらに、
1935年 堀口大學の「バナナ」
での描写では、当時バナナはまだまだ庶民のものではなかったことが見て取れる。
1948年には、長谷川町子さんがバナナの皮パフォーマンスを漫画で描写しているが、その頃から多くの漫画でバナナの皮が描写されるようになったようだ。
チャップリンの映画もアメリカと同時期に日本で公開されているから、半世紀の間じわじわとバナナスリップ現象が日本に浸透していったのだろう。
終わりに
「バナナの皮はなぜすべるのか?」著者の黒木夏美さんは、最後に実演することで検証しているが、私はしない。
なぜなら、そもそもバナナの皮は捨てるべきではないし、試さずとも滑りやすいのは既に経験済みだからである。
それでも、私はバナナが好きだ。
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